宝塚歌劇団から『ベアタ・ベアトリクス』の演目発表があったとき、絶対に見たい!と思いました、こうして観劇することができ本当に幸せです。
主人公は、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ(極美慎)、他の登場人物もジョン・エヴァレット・ミレイ(天飛華音)、名画のモデルとなったリジー・シダル(小桜ほのか)とジェイン・バーデン(水乃ゆり)。
ミレイの「オフィーリア」のモデルであり、ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」のモデルであるリジー・シダルを演じる小桜ほのかさんは、たいそう注目されたと思います。一歩間違えれば非難轟轟となるかも知れぬ大役です。
宝塚バウホールの入口には、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ(極美慎)がポーズをとった公演ポスターと完売御礼の赤札、大人気の公演です。憂いと野心のうかがえる魅力的な肖像ポスターです。
劇場に入ると、男性のお客さんが多いと感じました。画家や美大生、美術部の学生などの興味を引いて集まったのであれば、宝塚歌劇団の新しいお客さんの開拓に成功した作品であるかも知れません。
物語の見せ場は、ミレイ(天飛華音)の「オフィーリア」の制作シーンとロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」の制作シーンです。
両作品とも絵画を実際には舞台上に一切出さず、映像も使わず、ただリジー・シダル(小桜ほのか)を信じ、照明、アングル、道具など意匠的な効果だけで「オフィーリア」や「ベアタ・ベアトリクス」として観客に伝える演出が見事でした。もちろん、それに応えた小桜ほのかさんも大した舞台人です。
ラファエル前派の一人、ウィリアム・ホルマン・ハント(碧海さりお)は誠実でまじめな役柄、とても合っていたと思います。物語の中でもつなぎ役、舞台は彼がいることにより空中分解せず進行していると感じました。ウィルのような尖った個性が全く無い役を演じるのは相当に難しかったことでしょう。
主人公のロセッティの学生時代から晩年まで、短い現実の舞台時間の中、しっかり彼の一生を演じきった極美慎さん、これからがとても楽しみです。初主演おめでとうございます!