2025年1月14日付け、阪急阪神ホールディングスより発表があり、阪急電鉄(株)の1部門だった宝塚歌劇団を(株)宝塚歌劇団として法人化し、演技者(ジェンヌさん)を雇用契約にするなど改革計画が示されました。
◆メリット
1 業務委託契約 → 雇用契約へ
業務委託契約はトンデモないことが多い。一方、法律が守り、役所や裁判所が手厚く守ってくれる雇用契約に変わるのは良いことの方が多いと思います。
例えば、有給休暇を使って温泉旅行に行ったり、急な要り様の時すでに働いた分の賃金を前借りしたり、会社の事情で自宅待機の場合の賃金補償を受けたりできます。
2 社会保険の充実
①国民健康保険 → 健康保険組合
②国民年金 → 厚生年金(国民年金は内包)
③雇用保険(無)→ 雇用保険(有)
④労災保険(無)→ 労災保険(有)
毎月の健康保険料は安くなり、保障はむしろ手厚くなる。年金が1階建てから2階建てになる。失業保険はもらえる。身内の介護が必要なら休めるし、雇用保険が効くので生活費も政府がくれる。お稽古のため劇場に向う時、宝塚大橋でスッテンコロリン、骨折しても、労災保険が効くので医者代タダ、薬代タダ、生活費も政府が支援してくれる。全国ツアーで日本中を巡業する時も、新幹線の移動中やリハーサル、舞台出演中などにケガをしても労災保険が効くので医者代タダ、薬代タダ、生活費は政府が支援してくれる。納める保険料は①②③は会社とジェンヌさんと折半、④の保険料は(株)宝塚歌劇団が全額負担です。
3 すみれコードから就業規則へ
明文化されておらず何となく受け継がれていたすみれコード、これからは(株)宝塚歌劇団の就業規則が第1番のルールになります。業務委託契約では就業規則はありませんでしたが、(株)宝塚歌劇団との雇用契約になりますので、全てジェンヌさん(専科除く)が就業規則を守って仕事をします。
就業規則はじめ賃金規定、介護休業規定など役所(労基署)に届出なければいけません、役所の目がある、ということは意味があると思うのです。
◆デメリット
1 必要経費が不自由
美容院、化粧品、マッサージ、書籍、習い事のレッスン費など経費としていたジェンヌさんも多いと思います。これからは(株)宝塚歌劇団の会社員になりますので、何が会社の経費として落ちるのか、何が個人の必要経費として税務署に主張できるのか新会社の経理部門によく確認しなければなりません。
2 勤務時間外が自由とは限らない
勤務時間外は自由かというと、実はそうではありません。競合するようなライバルの仕事を勝手に引き受けたり、タカラジェンヌの品位を傷つけるようなことはできません。
例えば私立学校の教師が、他校の教師を兼業することを禁止したり、夜の仕事をすることを禁止することはありえます。
特にタカラジェンヌは品位を守るルールは厳しいと思うので、何がタカラジェンヌの品位をけがす行為なのか? を新会社の人事労務部門によく確認しなければなりません。
3 会社の指揮命令権の確立
業務委託契約と違い、雇用契約では会社の指揮命令権は確立します。意見を言ったり、アイデアを提案したりは全然OKですが、あまりにも業務命令に従わないとクビになることがあります。
「それは、業務命令ですか?」
と確認する勇気も時には必要かもしれませんね。
最後に、厚生労働省が会社に指示する無期転換ルールについて、阪急の発表では1年間の有期雇用契約とありますが、毎年契約更新をくりかえした場合は6年目には無期転換申込権が発生します。世間で言うところの契約社員 → 正社員 に近いニュアンスのことです。
研6以上は希望があれば有期雇用契約ではなく無期雇用契約を(株)宝塚歌劇団が結ぶとされているのは、この厚生労働省の背景があります。
以上、今回の法人化や雇用契約などについて、ジェンヌさんにとってメリット、デメリット、思いつくままに3つずつ書き綴りました。
とにもかくにも、劇団員が安心して芸の道に専念し、時には上手にリフレッシュをし、幸せな結末を迎えることができるように応援するばかりです。