宝塚歌劇団・雪組公演『蒼穹の昴』東京宝塚劇場のS席1階17列のチケット、『蒼穹の昴』の観劇はこれで最後、あとは千秋楽を映画館のライブビューイングで観る予定です。
じんわり染み入るのが盲目の胡弓弾き安徳海(天月翼)、その枯れた演技に引きつけられます。本当にそのような人生を歩んできた一人の老人がそこに実在していて、そして若者を導くために残余を生きている、そんな寂しいような、儚いような老人が胡弓の音とともに若者達を見送っていく、胸に残る登場人物です。
袁世凱(真那春人)は、人物像がよく伝わってきました、この『蒼穹の昴』では、まだまだ実力者の間をあっちに着いたり、こっちに着いたり旗色がよく分からない人物ですが、そのはっきりしない鵺(ぬえ)のような人物像が袁世凱その人なのでしょう。極端に善人でもなければ、悪人でもない、演じるには難しいお役だったと思います。舞台の表情の変化が素晴らしかった。
『蒼穹の昴』は傑作ですが、はじめの頃はあまり宝塚ファンの受けは良くなかったのか、チケットの売れ行きはよくありませんでした。
しかし、実際に上演すると評判の良さからじわりじわり人気が出て来て最終的には完売となりました。公演が始まってから買い増ししたファンも多かったと思います。
主人公の梁文秀(彩風咲奈)、みすぼらしくも清らかな李玲玲(朝月希和)と李春児(朝美絢)の兄妹、やさしくひかえめだけどいざとなると勇気のある譚嗣同(諏訪さき)、ヌルハチ公の御代から代々の忠臣の一族にて真直ぐな漢であり希代の歌ウマの順桂(和希そら)、魅力的な人物が多数登場して京劇あり龍舞あり、観客は見せ場の連続にすっかり心を奪われます。
学校の世界史や日本史の授業、この時代の授業はとても難しいので、いっそ宝塚の『蒼穹の昴』を教室で生徒に見させる方がよほど頭に入ると思います。
そのくらい、宝塚歌劇団の『蒼穹の昴』は全ての登場人物に魂が宿っていると感じるのです。