宝塚歌劇団・宙組公演 横濱RHAPSODY『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』、13列席の宝塚歌劇チケット。宝塚友の会の抽選販売で購入しました。
宝塚バウホール公演は全席指定、全席同額、座席はすり鉢状に角度が大きくついているので後方席でも前の客の頭は気にならず舞台がよく見えます。
宝塚バウホールへ上ると完売御礼の赤札、おめでとうございます!
ポスターは左から園田弥生(ヤヨイ)役の山吹ひばりさん、天地楽(ジョーイ)役の風色日向さん、ライアン・フジカワ役の亜音有星さん、舞台は⚓港町ヨコハマです。
開演前の舞台にはスクリーンに物語を暗示する映像が映し出されます。
作・演出の齋籐吉正さんがプログラムの本文で、「そんな時代の横浜の街を舞台にしたお話です。宝塚歌劇では珍しく、殆ど上演される機会がなかった世界に宙組の若者達が挑みます。」と記す通り大変難しい時代をとりあげたなぁと感心します。
『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』は、傑作です!
物語にどんどん引き込まれ、登場人物が実際に生きてそこに人生を歩んでいるように錯覚します。
風色日向さんではなくジョーイがそこにいる、山吹ひばりさんではなくヤヨイがそこにいる、そう感じてきます。
確かにジョーイは南方戦線からの復員兵であり、ヤヨイは色仕掛けのペテン師なのだけど、力強さや優しさや良心を感じさせる。戦前、戦中、戦後の昏(くら)い時代の中に明るさや清貧さを失わない主人公たちに光を感じます。
文化庁で何かしらの賞をとったり、NHK教育テレビで放送してもよいのでは?と思うくらいの名作です。
第一幕は、ハマのアイドル牧山アン(美星帆那)の記者会見から始まります。そして自分がGIベイビーだったことを認め記者達に啖呵(たんか)をきります。このあと始まる過去の物語では、牧山アンは少女期の姿で登場します。成人のアンと少女のアン、その両方を美星帆那さんが達者に演じ分けます。
時系列としては最初の場面が一番新しく、物語は一気に時代をさかのぼっていきます。
牧山アンが何者なのか、進駐軍の父、そのオンリーさんだった母(愛未サラ)がどんな人でどのように生きたのかが本編の中で描かれていくという構成です。
もちろん、物語の主軸は、幼馴染の3人ジョーイ、ヤヨイ、ライアンの淡い恋模様。
出征するジョーイにヤヨイが千人針を渡すシーンは切なくて泣けてきます。
ヤヨイは戦争花嫁になってしまうのか・・・と思いきやどんでん返し!
サイドストーリーとして戦争未亡人の田島房江(小春乃さよ)に養子縁組詐欺をしかけるジョーイ。
てんこ盛りの内容ながら最後はきれいにまとまっていく物語の流れ、作・演出の齋籐吉正さんは大したものです。
齋籐吉正さんは、プログラム本文で根岸外国人墓地に触れています。
遺棄されたり夭逝したGIベイビーが少なくなったからこそ、物語の世界ではしっかり牧山アンを大人になるまで成長させ夢をかなえさせ、現実世界で報われない分、仮想世界で報いる、日本人ならではの供養の方法ではないか? とharugotatsuは深読みしてしまうのです。
『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』は、登場人物が多くセリフも多くあります。
初めてセリフを聞く宙組生もいました、文化祭いらい!?
役者さんとスタッフさんと、ベテランと下級生と、本当にみなが合わさって出来た作品だと思います。
B-29による横浜大空襲、炎の精(輝珠ななせ、楓莉かの、ゆり遥、空輝紫夕)の演出はよく表現したと思います。
横浜の空を覆う500機を超えるB-29と燃やされる町、ヤヨイの「空が怖い」というセリフが心に残ります。
ほんの約80年前、アメリカの軍隊による日本の民間人を標的した攻撃があったなんて信じ難いことです。
南方の戦地で、国際法に反する行為をしてしまったと苦しみ続けるジョーイが憐れに思えて仕方がありません。
大変な時代をとりあげながら、最後の最後は人の良心を信じ、苦しみや悲しみを傍(かたわ)らに前へと進む市井(しせい)の人々を描いています。
次はライブ配信で観劇し、ブルーレイも注文しようと思いました。