宝塚歌劇団・花組公演『冬霞の巴里』、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開催。
梅田芸術劇場ネット会員(会費:2000円/年)向けの周旋チケットです。
『冬霞の巴里』、幕が上がると舞台にいるのは、エリーニュスの3人、
アレークトー(止まない者)芹尚英さん
ティーシポネー(殺戮の復讐者)咲乃深音さん
メガイラ(嫉妬する者)三空凛花さん
一見、ダーククラウンの類かと勘違いしましたが、主人公オクターヴ(永久輝せあ)の罪や業が呼び寄せてしまった「人ならぬモノ」たち。
セリフはなく踊りや姿勢と表情だけで表現し、これから舞台で起こる悲劇と心象を暗示します。
『冬霞の巴里』の世界観をつくる大切なお役であり、難しい役だったと思います。
オクターヴが登場人物の主役ですが、『冬霞の巴里』という舞台のテーマにおける主役はエリーニュスの3人であったと思います。
ヒロイン?のアンブル(星空美咲)はオクターヴの姉という設定、この二人、目的のために絆が増していくとはいえ ”姉と弟の愛” は、すみれコード的にに大丈夫?と心配しながら舞台を観ていました。
そして、女将サラ・ルナール(美風舞良)の下宿が物語の舞台の過半になりますが、出自が様々な曲者ばかりの下宿人に対して突き放すようなセリフを吐きながら、あばずれ女のような粗野な振る舞いをしながらも、芯の部分では善人を感じさせるサラ・ルナールはこの悲劇の微かな救いであり、人の世の諦観を表しているように思います。
『冬霞の巴里』の怖ろしいところは、悲劇としてのイベント(出来事)は舞台の上で半分しか起こっていないことです。
素直で思いやりがあり、まだ罪に汚れていないミッシェル(希波らいと)とエルミーヌ・グランジュ(愛蘭みこ)の終幕後に起こるであろう霹靂を想像すると、舞台の二人が誠実であればあるほど、観客はミッシェルとエルミーヌに思い巡らすでしょう。
オクターヴと同じくエリーニュスにとり憑かれる人生になるかも知れません。
一方で、赦しをもって、憎悪を憐憫に変え、エリーニュスを遠ざける人生かもしれません。
私は、希波らいとさんと愛蘭みこさんの演技から後者の未来を信じたいと思います。